カーバックスの母体である豊自動車を創業したのは1984年。奥様と二人で小さな整備工場から始められたそうです。2000年にカーコンに加盟した経緯を、小島常良代表取締役が振り返ります。「当時、信号待ちの車を見ていると、車のバンパーにはキズ、ドアにはヘコミがある車が多いのが目につきました。しかし、ドライバーは保険を使いたくないという人がほとんどでした」。

ドライバーの潜在的ニーズに気がついた小島代表は、東京オートビジネスショーの視察へと出かけ、「カーコン工法」に衝撃を受けました。同時に、鈑金塗装の修理内容をお客様と相談しながら決定できる「鈑金見積」など、カーコンが提供する環境は、新工法とフロントマンに視点を当てた顧客主義を具現化する、新しい業態なのだと共感したそうです。

「年間1,200台もの修理をこなすカーコン店として雑誌等で取り上げられ、同業他社からは『豊自動車は手を抜いている』と誤解されたこともあります」と小島代表。そこで、小島代表は同業他社の誤解を払拭するために工場見学を実施したそうです。実際にドアを凹ませ、30分で直すデモを参加者の目の前で見せたことにより、手を抜いていないことを同業他社に証明することとなりました。こうした実績が評価され、同店には鹿児島県や広島県などから15社が技術研修に訪れたこともあるそうです。

心を込めたお見送りも徹底されている

カーコンのオープニング記念イベントとして「先着5台に限り、バンパーの修理無料」を打ち出した時には、朝から15台の車が行列していたといいます。これも顧客ニーズを読み、顧客満足を追求する同店を現すエピソードの1つです。

「私はディズニーランドやリッツカールトンホテルが好き。スタッフの動き等がとても参考になるのです。究極的には、整備工場でディズニーランドのようなおもてなしをしたいと思っています」と小島代表が話します。

同店では、お客様のホスピタリティを大切にしており、お客様のお出迎え、お見送り、元気な挨拶、笑顔でのお客様対応は当たり前。小島代表はスタッフに「雨の日のご来店者には、傘を2本持ってお迎えに行きなさい（1本はお客様のため、1本は自分のため）」と指導するなど、顧客満足の創造に余念がありません。

「修理はどこでもできます。当店を選んでいただいたお客様への感謝を表明しなくては」と語る同店には、現在は年間1,000台弱の修理車両が入庫します。

「地域の一番店でありたい。その実現のためにも『生涯取引顧客創り』に取り組んでいます」と小島代表。

「お客様はいつも『歓迎されたい』、『損をしたくない』、『優越感を感じたい』」とお客様の心理をとらえ、スタッフが日々意識を高められる場所に掲出しています。

経営理念、社是等は共通認識事項として徹底

同店の顧客構成は、新規が4割に対し、リピーターが6割となっています。お客様対応においては、ご来店時にお客様のキーをお預かりし、帰りやすい方向に向きを入れ替えることや、汚れを気にするお客様に配慮し、ビニールのシートカバーや足下にマットを敷くことは基本中の基本とされています。

お客様に請求書を送る際には、アンケートを同梱してお客様の生の声を収集したり、代表が編集した「まごころ通信」（ニュースレター）を手配り、または郵送するなど、顧客とのコミュニケーションづくりに工夫を凝らしています。

また、より高い顧客満足に向けて、同店では「社内研究会」が立ち上げられています。この研究会はスタッフがペアを組んで、7つの責任カテゴリーごとに、その研究結果の報告、皆が取り組むべき課題等の発表会を定例化したもの。「顧客満足は当たり前『感動』『感謝』『期待』がある接客を」という同店の姿勢を、一層向上させるための仕組みづくりです。

「経営者としての私の目的は、『社員の自立＆自律』を助けることにあります。「社内研究会」は自らが考え、提案することを習慣化するために実施しているのです」と小島代表。

「限られたマーケットの中で、既存のお客様をしっかり守り、社員や家族、地域の幸せに貢献したい」と考える小島代表の眼差しには、一切の迷いがないように見えました。『生涯取引顧客創り』に向けて、死角はないようです。